広告業界体験記 – 限界社畜からワーホリに行った話

梟ほうほです。
私は広告業界で約4年ほど働き、アラサーのタイミングで勢いで会社を辞めて勢いでワーホリに行きました。
その体験談を少ししたいと思います。

煌びやかな闇。私が広告業界で働いた感想です。

煌びやかな世界
これから広告業界を目指す人たちが居たら、まず間違いなく煌びやかな世界です。
有名な芸能人や監督、華やかなセット、美味しいロケ弁。
地方・海外ロケでオフ日に遊んべたり、自分ではとても入れないレストランに連れっててもらったりなど、
おまけの楽しみもあります。

そして苦労して作ったものが世に流れ、見てもらえる仕事です。
世間の反応が返ってくるのも面白く、売り上げに影響を与えるポジティブなものから、
いわゆる炎上もあります。
(炎上について補足:制作サイドにはなんの決定権も無いので、何となくこの企画炎上しそうだなと思いながら作る事もあったりします。もう炎上すべくして炎上してる企画もあります。内部からそれらを見られるのもある意味面白いです。お金掛かってますもん。)

それと映像を勉強しているのなら、広告業界(CM)は学びの場としても最高に良い環境だと思います。
広告の面白さは、短い物なら6秒以内で表現しないといけない。
限られた時間で情報を伝え、商品やクライアントのイメージを少しでも定着させる創意工夫が多様にあります。
また制作スパーンは他の映像作品よりも短いので、多数の案件に携わることができます。
撮影に至っても、ワイヤーアクション、ミュージカル物、コメディなど、
映画のようなジャンル表現が多彩にあるのも面白いポイントです。

撮影や照明などの技術部は、おおよそ1案件1〜3日の稼働になるので、
それだけ多くの撮影に携わることができます。
制作(PM/プロダクションマネージャー)は、企画・準備・撮影・ポスプロ・納品まで
全ての工程に関わります。責任も多く伴いますが、お金の流れやマネジメントが学べ、
プロデューサーを目指すのも難しくありません。

そしてたかが広告ですが、感動を与えることもできるのです。


さて、広告業界の闇について、あくまで私個人の体験ですが。

漫画/アニメの「ゾン100」をご存知でしょうか?
作品冒頭で主人公が務めていた激務のブラック企業はCM制作会社の設定でしたね。
主人公は劣悪な労働環境で肉体も精神もすり減らされ徐々に鬱になっていく。



あれです。



多少オーバーにしている表現もありますが、
「ゾン100」を初めてアニメで見た時、あまりに共感しすぎて咽び泣きするかと思いました。
まだ見たことのない方もいるので、私が見聞きし、経験した部分も交えて。


・長時間労働
 1案件につきの仕事量がとてつもなく、かつ人手不足なので複数案件を同時に抱えます。
 担当以外の案件の撮影ヘルプも行かなければいけません。
 月労働時間は平均230時間超えでした。最凶だった時は333.1時間だったことがあります。
 もう少しでゾロ目だったのに。。と何故か悔しかったです。
 そしてアニメ同様に、”飲み会後会社に戻る”、”社内泊”などは当たり前で、
 私もお泊まりセットは常備で、段ボール敷いて床で寝てました。
 もう衛生面とか人としての最低限なものとかそれどころじゃなかったです。
・パワハラ
 日常です。それが社内だけに留まらないのが辛いところ。
 プロデューサー、監督、スタッフ、代理店…敵は上にも下にも身内にいるのに、味方は皆無です。
 撮影現場で技術スタッフから「邪魔だどけ!」といきなり怒鳴られ泣いた新人を何人も見てきました。
 令和の時代、まだ居るんです。
・セクハラ
 私の経験上ボディタッチなどは無かったですが、目上との飲みの場では下ネタは基本ですので、
 女性社員はやはり少々キツいです。下ネタを強要されたこともあり、
 酒瓶でぶん殴ってやろうかと何回も思いました。(パワハラはダメです)
・ワークライフバランス
 無いです。部署にもよりますが、基本裁量労働制なので、会社に来る時間が決まってなければ、
 帰れる時間も決まってません。
 もう一度言います。
 来る時間が決まってなく、帰る時間も決まってません。
 何時までも仕事できます。
 また、振替休日制度はありますが、必ず使えるなんて誰も言っていません。
 月230時間働いてますので、恋人も友達付き合いもほぼ無理です。
 ただ〈運が良く〉案件が終わり振替休日が一気に使える時もあって、
 突如10連休が舞い込んだ時は、海外に行ってストレス爆散しました。稀に良いこともあります?
 ただ、地球上のどこに居ようが社用スマホとパソコンは肌身離さずに。
 旅行中でも電話が鳴れば絶対に対応しなければいけません。
 不在中の仕事を引き継いでくれる人は居ないので、旅先でします。もちろん出勤にはカウントしません。
・裁量労働制/みなし残業
 この2つが揃っている会社は、好きで本当にやってみたい仕事以外は、
 本っっっ気で避けてください。
 これについて上手くまとめているブログなどは他にもあると思うので詳しく書きませんが、
 まじで、避けた方が身のため心のためです。
 333時間働こうが給料は増えません。
・理不尽な対応
 先ほど炎上しそうな案件でも、制作サイドは黙ってやるしかないと書きましたが、
 これも実は結構精神に来ます。「この企画は駄目じゃないか」と思っていても、
 上記同様に時間と命を削って完成させなければなりません。
 苦労が報われないと分かって苦労するなんで誰もが嫌ですが、一制作サイドに意見は出せません。
 (なので私は自分の担当案件が燃え盛ってるのを見て楽しむことに切り替えました。
 3ヶ月の苦労で焚き火してる気分で。)


こんな生活なので、病気や精神疾患になる同業者は少なくありません。
「ゾン100」でもそうでしたが、過労死または自死しそうだったなども、無い話では無いです。
突然音信不通になり、アパートに安否確認に向かわれる先輩も、
自ら道路に飛び出したという人の話も聞いたことがあります。

退職代行でもバッくれでも良い。
自分の健康を蝕んでまでやるべき仕事はありません。

梟の退職話〜ワーホリに至るまで

私は運良く「好き」を仕事にでき、しんどくても「好き」を火種にし4年ほどこの業界に居ました。
だが、気付いた時にはその原動力の「好き」が呪いに変わったのです。

そのためにした努力、費やした時間、「好きなことを仕事にしている」というプライド。
辞めたいと脳裏を横切ってもボロボロでも、「好き」が足枷のように繋ぎ止めてくれました。
今考えれば躁鬱状態の4年間だったと思います。

そしてふとある時、恐らく抑鬱期だった時に、とてつも無い虚無感に襲われました。
私の人格も人生も仕事の評価で形成され、仕事以外では存在しなかったです。
「好き」も私の人格から離れてしまいました。
この頃睡眠障害もあり、ひたすら苦痛でした。

虚無感を覚えてからはまあ何もかもが嫌になりました。

決定打になった事件は、有給中に呼び戻された時。
大仕事の後でやっっっっと取れた有給でしたのに、「トラブルが起きたから戻ってこい」と。
都内を離れていたので夜行バスを取り、部屋着のまま都内に戻り、その足で早朝5時には出社し、
後から来た上司に部屋着のままめちゃくちゃ怒られる。

今まででしたらきっと飲み会で愚痴にしていたであろう私は、
踵を返してはそのまま人事に電話をし、辞めることを伝えました。
寝てないからもあり、
何か突発的で強力なエネルギーが頭に向かって湧いていったのを覚えています。
そして電話を終えた頃、胸では何も感じないのに涙が溢れました。


さて、後先を考えていなかったので、辞めて何をしよう?
新たな虚無感に襲われました。
人生リセットボタン、勢いで押しちゃった…

先の不安は考えれば考えるほど後悔しそうだと思ったので、
せっかくリセットボタン押したのなら、洗いざらいリセットしちまえ!と、
これまた勢いに任せて、行ってみたかったワーホリに申し込んで、すぐさまお金を払いました。

ここまで1週間無かったと思います。全部勢いです。

が、これが無ければ足枷を切れなかったのかもしれません。
きっと心身ともに限界で余裕もなかったので、
考えなしに躁状態の自分に舵を切らせていたのだと思います。

20代、全く自分の人生を送れなかったし、仕事のせいで後回しにしてきたこと全部取り戻したい。
そんな軽い気持ちで異国に飛びました。
ワーホリの体験はまた別で書きたいと思いますが、
躁状態の自分、馬鹿なことしなくて良かったと…今思うと少し怖かったです。
あの勢いで道路に飛び出す力ありましたもん…。

自分の精神状態は意外と分からないものです。
聡明な判断が出来なくなる時は、予想なしにやってきます。
やはり、自分の健康を蝕んでまでやるべき仕事はありません。

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